お部屋を借りるときにはどうしても避けて通れない「契約」。初めてお部屋を探す方にはわかりやすく、「引越し貧乏」を自認するほどのベテランさんにも「管理会社ってこんなことを考えてるのか」とわかっていただけるように「賃貸」契約の事をご説明します。よそよそしい手順説明は他のサイトにまかせて、ここでは「管理会社の考え方」も含めてご理解いただけたら幸いです。

 弊社は不動産業種の「賃貸管理」というカテゴリーを主力として営業しています。これは、賃貸物件全般に関する「管理」と「保守」を行う業務です。
 実はこの仕事、弊社から見ると一つの商品(貸室)にお客様が2人いるという非常に特殊な形態なのです。一人目は貸室を所有するオーナー様。二人目はそこをご契約して入居されるお客様。オーナー様には安心できる資産運用を、ご入居されるお客様にはより良い環境をご提供するといった、相反する利害を整理しなければなりません。そのため、どちらか一方の利益を追求することもできず、時にはジレンマに陥ることもございます。特に、金銭負担に関することは双方の利害は正反対となりますので、その調整といったら・・・・。

ここでご説明する内容は、あくまで「株式会社荒嘉(アラカ)」で通常行っている事柄です。本内容が全ての不動産賃貸にあてはまるものではありません。そこのところを充分ご理解頂いた上でお読みくださいますようお願い申し上げます。
1.ご契約にかかる費用について  賃貸借契約について、通常かかる主な費用は下記のものがあります。

 1.敷 金・・・ご契約に際して、貸主が借主からお預かりする金額。退去などで、解約された時には借主へ返還されるもの。(但し、設備の破損や賃料の滞納など、借主が負担するべきものがある場合には、こちらから差し引かれ、残りを返還されることがあります。)

 2.礼 金・・・ご契約に際して借主が貸主へ支払う金額。これは貸主の収入になりますので、解約されても借主に返還されることはありません。

 この「敷金」「礼金」に法律的な定めはありません。あくまでも「商慣習」ということになります。

 3.日割賃料・・・ご契約の開始日が月の中途からとなった場合に、その日からの賃料・共益費等を按分して計算します。この計算方法は、管理会社によって1ヶ月を一律30日として計算する場合や、その月々の日数を基準にする場合(アラカは後者)等、若干の違いがあります。

 4.月額賃料等・・・現在の賃貸借契約は、ほとんどが前家賃(翌月分を当月末日までに支払うこと)となっているようです。そのため、ご契約開始が月下旬からとか、1日からとかの場合には事前に賃料等をあわせてご請求させて頂くことがございます。

 5.家財保険料(住宅総合保険)・・・よく「火災保険」と間違われる方がいらっしゃいますが、ここでいう住宅総合保険は、若干ニュアンスのちがうものとしてご理解いただきたいと思います。
 共同住宅にお住まいの方は、万一事故が発生した場合に、隣室の方やオーナー様にご迷惑をおかけしてしまうことがあり、また、住宅という性格上、その被害も大変大きな金額になってしまうことが考えられます。そのため、ある一定の保険に全入居者がご加入頂き、万一の備えとさせて頂くものです。ご加入者様の損害に対する補償ありますが、どちらかというと、ご加入者様の為というよりも、ご迷惑をおかけしてしまった方やオーナー様への補償という性格が強かったりします。あまり頻繁にあっては困りますが、実際このおかげで事故が起こってしまった方も、巻き込まれた方もきちんと補償できたといったことは弊社も経験していますので、大変大切なものと考えています。契約書には家財保険(住宅総合保険)に加入することを一つの条件として明記されています。

 6.鍵交換費用・・・昨今の防犯意識の向上からか、弊社でも入居時に鍵の交換をお勧めしています。つい2年ほど前は、鍵の入居時交換はあまり意識せずに従前のものをお渡ししておりました(退去時に全ての鍵を返還して頂いているという信頼もございました)が、やはり、根拠の薄い信頼関係だけでは、新しいご契約者様に不安を与える部分も確かにありますので、お声をかけながら自己負担で交換して頂くことが多くなりました。今まで事故がないからと言って、今後も事故が発生しないということではないですから・・・。

 7.仲介手数料・・・お部屋を紹介してもらった仲介業者様に支払う手数料。最大で賃料の1ヶ月分(消費税別途)が必要になります。貸主と直接契約ができる場合、仲介手数料はかかりません。

 8.その他の費用・・・その他特別な設備の負担金等が明記されている場合がありますので、ご注意ください。この項目にある費用の場合には、必ず必要なものなのか、または、強制なのかを確認する必要があるでしょうね。

 こうして考えてみると、ご契約に関して大きなお金が必要になることがわかります。礼金1ヶ月分・敷金1ヶ月分の物件に入居する場合でも、何と賃料の4ヶ月分以上(敷金1+礼金1+賃料1+仲介手数料1+その他)の金額がかかります。仮に7.5万円の物件なら、30万円でも足りません。これに引っ越し代や家財道具の購入費用などを考えると、一時的にかかるお金はとても気軽には考えられません。

 最近の傾向としては、どんどん敷金・礼金の掛け目が小さくなっていて、上記に記載されているような多額の初期契約費用がかかることは少なくなり、賃貸物件をお探しの方には良い傾向となっています。敷金・礼金0ヶ月を謳った物件も目につくようになりましたが、残念ながら、弊社では貸主様のリスク保全を考えた場合、そこまで思い切った賃貸条件を出す勇気はありません。また、管理会社としては「より安全なご契約者」として考えた場合、こうした費用をご用意できないお客様は「余裕のない方」という判断にも結びつき、万一の保全ということを考えると「心配しながら」審査するということとなり、お申し込みをお断りしてしまうこともあります。
ただ、それぞれのご事情をお聞き出来る場合、例えば「出産間近で貯金を崩せない」とか「月々の収入は充分にあるのだけれど、目的があって現在の貯蓄には手をつけたくない」など、お客様それぞれで考慮しなければいけない事情もあり、お申し込み書面だけでは一概に判断できないこともあるので、なるべくお申込者の事情をお聞きして対応するように心がけています。
2.初期契約費用を抑える 上記に記載された敷金・礼金が2・2が普通であった頃は、その初期費用が高額であったため、クレジットカードを利用して初期費用を分割払いにできる仕組みをもった金融系の会社もありましたが、最近の初期契約費用は以前と比べると低額になってきているため、そうした方法を相談される方はなくなりました。また、ここまで初期費用が抑えられた状況では、これ以上初期契約費用を抑える方法はなかなか見つけにくいのではないかと思います。むしろ、他のページでお伝えしているように、保証会社との保証契約が必須となっていくであろう流れでは、むしろ増えてしまうのではないかと思います。

 では、見つからないかというとそうでもありません。弊社の空室情報を見て頂いた方はご理解いただけるのではないかと思いますが、賃貸物件の取引態様が「貸主」となっている物件を探すということです。
「取引態様」とは、その物件を募集している不動産業者が契約に際してどういった立場かを表したものです。ご存知のように、貸主と直接賃貸借契約を締結した場合には「仲介手数料」はかかりません。東京23区内の場合には少なくとも5万円以上の仲介手数料を考えなければいけないことが多いと思いますが、これが不要になるということは、かなりの違いがあります。

賃貸物件をお探しのお客様には、不動産屋というと「怖い」とか「騙されるんじゃないか」とか考えて、弊社のような「地元の不動産屋」に問い合わせることをためらう方も多いのではないかと思います。そのため、どうしてもメジャーな仲介業者様や不動産業者様に流れがちですが、現在の不動産業者はその規模の大小にかかわらず、法律で厳格に規制されているので「悪質な業者」を探すほうが難しいだろうと思います。また、営業マンも地元志向で頑張っている業者も多く、熱心に相談にのってくれるはずですので、少し勇気を持ってお問い合わせしてみてください。少なくとも、弊社地元である「葛西」では、悪質な業者の噂は聞きません。

また、取引態様が「代理」や「専属専任(媒介)」または「専任媒介」となっている物件も見逃せません。「代理」とはその会社が所有者の代理として契約を締結できる立場ということですし、「専属専任・専任媒介」とは、貸主から募集窓口として特別に指定されている業者ですので、条件交渉に関しても話が早いことが多いです。こういった立場の業者は貸主に対する責任も大きいため、入居後の管理を行なっていることも多く、色々なアドバイスを貰えることも期待できます。こちらの物件を契約する場合には、仲介手数料が必要となりますが、物件によってはその交渉にも応じてくれることがありますので、気軽に聞いてみると良いです。

条件交渉するにあたって、お客様にお気をつけいただきたいこと

 弊社でもお申し込みを頂くにあたっては、様々な条件交渉を頂きます。冒頭にも表記しましたが、貸主と借主の相反する立場を調整するため、双方の妥協点をお探しすることで、交渉成立とさせていただくようになります。そのため、条件交渉はお申し込み頂くときに全てお伝え頂くようにしてください。
お客様の中には、ご要望を少しずつ出される方がいらっしゃいますが、これは貸主にとっては「足元を見ている」と、とられかねず、双方が不愉快な思いをしてしまうことになりかねません。そうしますと、成立するものも成立しなくなってしまうことになってしまいますので、お申し込みする時は、節度を以て、要領よくご指摘頂くことをお願いします。
3.定期借家契約のこと  契約時の費用や賃料等を抑えられる可能性があるということで「定期借家契約」という契約形態が出始めています。これは、貸主の事情を考慮し、契約期間満了を以って無条件解約を認めることで、賃料等が低額に抑えられるのではないかという期待を込めて制定されました。でも、実情は、リロケーション物件を除いて、借りる側に無条件明け渡しのリスクが増えているだけで、特段、賃料等が安くなっているということは少ないようです。どちらかと言うと、この制度を利用して、契約上では貸主が有利となっている事のほうが多いような気がします。言い換えれば、この制度を利用して、貸主のリスクを少なくし、借主側が通常なら持っているはずの権利をなくしているというのが現実のようです。通常の考え方ですと、2年ほどで明け渡しいただいても、「修繕費用負担のガイドライン」がある以上、その都度のリフォーム費用が貸主にも多くかかってしまうことは明白ですから、この制度では、不動産業者以外の誰も得をしないということだと思います。最近では、再契約前提の定期借家契約なども出ているようですが、これなんかは、正に、本来の定期借家制度の趣旨からははずれていますよね。
 今後、経済状況が良くなって賃料相場がどんどん上がっていけば、この制度の本来の意味が出てくるかも知れませんが、弊社では、今のところあまり意味がないように考えています。
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